「かざす」だけが今のARじゃない。次世代型ARスマートグラス・ヘッドセットデバイス
ARは、スマートフォンやタブレットのアプリをかざすだけではなく、ウェアラブル端末であるARグラス・スマートグラスを通して体験することもできます。本記事では、開発が進むARグラス・スマートグラスに関してご紹介いたします。
携帯電話、スマートフォンと技術進化を遂げ続けているデバイスですが、次世代の形として「ARグラス」に注目が集まりつつあります。2019年現在、Appleが2020年にも新製品としてARグラスをリリースするのではないかという噂が先行しているほど、市場ではこの新しいデバイスへの期待が高まっているようです。 これまでは、スマホやタブレットなどをかざす形によるAR体験が多く見られていましたが、グラス・ゴーグル型のように常に身につけられるタイプのデバイスが普及すれば、もはやARは生活の一部となることでしょう。既に、作業現場などでARグラスの着用により業務進行を効率化している例も増えてきています。 そこで今回は、現在そしてこれからリリースされるARグラスにはどんなものがあるのか、見ていきたいと思います。
マイクロソフトがリリースする産業特化型ARグラス「HoloLens 2」
マイクロソフトが開発した「HoloLens2」は、ARを視聴するための拡張された視野角を持つデバイスで、視界の中でAR映像を大きく捉えられます。また空間に配置したCGオブジェクトの操作、共有も可能です。 さらに、モデルのバージョンアップが重ねられたことによる「つけ心地」の良さ、細かい指の動きなどを認識する「ハンドトラッキング機能」も特徴です。そのためまだ一般には未発売ながら、 スマホやPCを持ち込めない作業現場など各種ワークシーンでの試験運用がスタートしています。
Google開発の業務効率化スマートグラス「Glass Enterprise Edition 2」
出典:engadget
2019年5月、Google社がARグラス「Glass Enterprise Edition 2」を発表しました。カメラ部分を除くと一見普通の眼鏡に見えるシンプルな形で、46gの軽量デザインとなっているだけでなく耐水防塵性能もあります。同社は本製品のターゲットを法人としており、作業現場などハンズフリー環境が求められる場所での利用が想定されているようです。
国内企業ともコラボレーション、ファッショナブルなサングラス型スマートグラス「Nreal Light」
出典:Nreal
2019年5月に中国のnreal社がスマートグラス「Nreal Light」を発表しました。見た目はほぼサングラスで、弦部分を折り畳めます。操作には外付けの操作端末、あるいはAndroid端末との接続が必要ですが、空間認識や位置トラッキングに優れており、軽量であることが特徴。一般リリースは2020年の予定で、開発者版の無償貸し出しキャンペーンを現在おこなっています。また、「CEATEC2019」KDDIブースではauオリジナルデザインの「Nreal Light」展示もありました。今後、日本デベロッパーとのコラボレーション展開が進むのかも気になるスマートグラスです。
Androidの通知が受け取れて「指輪」で操作するサポート型ARグラス「Focals」
出典:North
カナダのNorth社がスマートグラス「Focals」を2018年12月に発売しました。普通の眼鏡と変わらないデザインで、弦部分に設置されたプロジェクタから映像をレンズに投影するという仕組みになっています。Bluetooth接続のスマートフォンから取得したスケジュールや天気、メールなどの情報を表示させるというサポートデバイスの側面が強い本機ですが、アップデートによりAndroidの通知がすべて受け取れるようになりました。操作には指輪型コントローラを使い、グラス部に触れることがなく操作感が浮き彫りにならないことが特徴です。さらに本体内臓のマイクとスピーカを使い、Alexaとの連携も可能になっています。
プライベートスクリーンのように楽しめるヘッドマウントディスプレイ「DreamGlass Air」
DreamWorld AR社が発表した「DreamGlass Air」は、広い視野角を持つヘッドマウントディスプレイです。眼前に投影されるAR仮想ディスプレイの大きさは、着用時の体感で100インチともなります。2019年8月にクラウドファンディングで開発資金を募ったところ、開始5分で目標額を達成したという逸話があるほどで、まるで自分専用ホームシアターともいえるような大画面ディスプレイへの、市場からの確かな期待がうかがえます。 さらにDreamGlass Airでは、接続したスマートフォンやゲーム機の画面をミラーリングして視聴でき、100インチディスプレイに複数のウインドウを表示させて作業することも可能です。現実に重なるARディスプレイであるため、没入感ある映画鑑賞やスポーツ観戦をおこないながらも視界内では自分の周辺状況も捉え続けられることも本機の特徴といえます。
精密な操作が強みなARグラス「Magic Leap One」
出典:Magic Leap
2018年8月、アメリカのMagic Leap社から「Magic Leap One」の開発者版がリリースされました。本デバイスは、手や目を使ったトラッキング、もしくはコントローラによる細かい操作や、音声認識での操作が特徴です。また空間を認識することで現実にキャラクターや物体をAR表示させたり、登場するホーム画面でアプリ操作をおこなったりといったことができます。開発者版リリース以前から、有名企業からの巨額な資金調達という背景とともに注目されており、2019年7月には、精密な兵器操作が要求される軍事訓練にも利用されて話題となりました。
裸眼でも快適な視聴環境を提供する「RETISSA Display II」
出典:アスキーストア
2019年10月、角川アスキー総合研究所は、同社ECサイトにてヘッドマウントディスプレイ「RETISSA Display II」の受注を開始しました。発売の予定は2020年2月となっています。本製品には、網膜に直接映像を投影するというQDレーザ社の技術が利用されており、同技術を用いた先代機種よりも品質を改善、さらに60gから40gへ軽量化、半額以下という低価格化を実現しています。本機により、利用者の視力に関わらずAR映像が見られるとされており、眼鏡やコンタクトレンズを使わずに映像鑑賞が楽しめるというメリットがあります。
「音声AR」が楽しめ、ワイヤレスヘッドホンとして使えるスマートサングラス「Bose Frames」
出典:bose
2019年10月、Boseは「音声AR」を味わえるスマートグラス「Bose Frames」を日本国内でもリリースしました。基本的にはワイヤレスヘッドホンとして音楽鑑賞や音声通話利用することが主目的のデバイスですが、音声ARによって、スマートフォンのGPS機能と連携したマップナビゲーションなどの便利機能が得られます。ウェアラブルデバイスとして同社史上最軽量の45gを実現し、サングラス部分ではきちんと紫外線A・B波をカットするという実用的な一品です。
Alexaと連携するスマートグラス「Echo Frames」
出典:engadget
2019年9月、Amazonから同社AI音声アシスタント技術「Alexa」と連携するスマートグラス「Echo Frames」が発表されました。購入には招待が必要で、このグラスを使うことでAlexaに質問した答えを聞いたり、外出時にスマートホーム機器を操作したりといったことが可能になり、将来的にARを利用した機能の付与が噂されています。 Alexaを利用するためのマイクやスピーカが内蔵された、普通の眼鏡と変わらない見た目となっており、同社は本製品をまだ実験段階としつつも、将来的に一般に普及するものとして位置づけています。
視界を3Dカメラ撮影、自分だけの写真をSNS投稿できる「Spectacles 3」
出典:ギズモード・ジャパン
SNS「Snapchat」運営のSnap社が開発する「Spectacles」シリーズは「サングラス一体型のワイヤレスビデオ」とされており、2019年現在、次世代機の「Spectacles 3」が発売されようとしています。両目の視界別にカメラ撮影ができることが特徴で、撮影した写真は奥行きある3Dとなります。またARエフェクトで写真を彩ることもできるため、SNS投稿と抜群にマッチしたデバイスといえそうです。
「最終的なプラットフォーム」を実現するために。Facebookが目指すARとは
出典:cnbc
Facebookは、2018年のイベントにてARグラスの開発を進めていることを発表しました。関係者によると、スマートフォンのように通話やディスプレイ操作ができるだけでなく、SNSで着用者の視界がストリーミング配信できるようになるかもしれないと予測されており、SNS運営企業である同社の個性が際立つ製品となるようです。過去にもCEOのザッカーバーグ氏はARを「最終的に目指すプラットフォーム」であると表明するなど、ARグラスに対する同社の強い意欲と方針がうかがえます。その後Facebookは、2019年1月にAR用小型ディスプレイを特許登録、Ray-Banブランドを有するアイウェアメーカーLuxotticaと提携。まもなく本格的なスマートグラスのリリースが報じられるかもしれません。
水泳選手をARがサポートするスマートゴーグル「FORM Swim Goggles」
出典:AXIS
ARグラスがスポーツシーンにも進出し始めています。カナダのFORM社がリリースした「FORM Swim Goggles」は、水中メガネそのままのデザインで、搭載するARディスプレイにタイムやストローク回数などの情報を表示できる水泳用スマートゴーグルです。 また、コーチが休憩のタイミングを表示させるといった情報のカスタマイズもでき、水中と地上というような少し離れた場所からでもアスリートをサポートできる製品となっています。
「Ultraleap」の技術が次世代のスマートグラスにもたらすものとは
出典:ultraleap
Leap Motionの名で知られ、買収や統合などにより現在「Ultraleap」という名になった企業が持つ技術が、次世代デバイスへ進化をもたらすのではないかという期待が高まっています。 同社は、PC/VR・AR向けコントローラ用の赤外線センサーを利用した高精度なハンドトラッキング技術を開発してきた企業です。過去に「Project North Star」というプロジェクトにてARヘッドセットを発表しました。同プロジェクトでは、高解像度かつセンサー利用により広い領域でハンドトラッキングが稼働するという100ドル以下のARデバイス提供を目指し、注目されました。こういった技術があれば、一般に普及しやすい値段で、より繊細な操作ができる実用的なデバイスの発売が実現するかも知れません。
ECサイトの常識を変える?ARグラスを使ったメルカリの実証実験
出典:MoguLive
ネット通販で知られる株式会社メルカリが、自社サービス品質向上のために2018年12月から開始した実証実験にARスマートグラスを採用しました。実験にはVuzix Corporationの「Vuzix Blade」を使用しており、内容は、任意の商品の現物を指差すとメルカリ内で出品されている類似商品を表示させられたり、またハンドサインで「お気に入り」登録できたりするというものです。同社は将来的に、こういったハンドジェスチャーのみによる売買行動の完結を目指すとのこと。ARグラスが人々の生活に根付いた近未来での、ECサイトの利用形態が示唆されているようです。
香港MAD Gaze社による日常生活をサポートするARグラス
出典:Kickstarter
香港のMAD Gaze社が、新しいグラス型ARデバイスをクラウドファンディングサイトでリリースすることを発表しました。グラス着用による巨大ディスプレイでの映像鑑賞やインターネット接続、ARゲーム体験ができ、生活の中で常用し続けやすい75gという軽量なデザインであることが特徴です。ハンドジェスチャーやワイヤレスキーボード、音声認識などによる操作が可能という、まさに次世代を担うデバイスといえそうです。
ファッション感覚で身につけながら情報が受け取れる軽量なARグラス「Norm Glasses」
出典:Kickstarter
アメリカのHuman Capable社が新ARグラス「Norm Glasses」のクラウドファンディングを開始しました。AndroidOSで動作するグラスで、リリースは2019年12月を予定しています。同社は本機を「より軽量でスタイリッシュなARグラス」と位置づけており、音声認識機能のほか、音楽鑑賞や通話、スマートフォンとのBluetooth接続にも対応予定。グラスをかけているだけで、日常生活に必要な情報を受け取れるようになっています。
ARGO編集部のひとこと
国内外問わず、多くの企業が新しいARグラスを開発、リリースしている例を見てきました。今後、新しいデバイスの普及がより進むことで、将来は日常生活のなかで当たり前のように自動的にARによる情報を受け取れる、便利な世の中となるのかも知れません。