松屋銀座に「板チョコ部屋」が出現。ARと組み合わせた、新たなイベントPR方法。
松屋銀座の「板チョコの部屋」とは?
2018年のバレンタインデーに、松屋銀座で「GINZAバレンタインアベニュー」イベントを開催。メイン企画として「板チョコ部屋」が誕生しました。 バレンタイン期間中(1月31日~2月14日)、イートインスペースが「限定販売されるチョコレート」のイメージで装飾され、「板チョコ部屋」として生まれ変わったのです。
部屋の中では、最近話題の「フォトジェニック」を狙った企画として、ARが活用されたことも話題となっています。ARとは「拡張現実」のことで、登録してあるマーカーを専用のアプリでかざすとフォトフレームや3Dのコンテンツを出すことができる技術です。
松屋銀座がARを使うに至った経緯とは?
近年のバレンタイン市場において、「チョコレートをどこで買うか」の問いに対し、「百貨店」との回答が全体の60%を占め、1位となっています。 しかし、2位以下に続くスーパー・コンビニエンスストアで買う層も全体の25%、クックパッドなどレシピサイトの普及により「手作り」も全体の20%と、無視できない数字になってきています。
こうした背景もあり、他店舗との差別化が必要となってきている松屋銀座は、以前からバレンタインの企画としてさまざまな施策をおこなってきました。 例えば、去年は自分の顔が漫画の主人公の顔と入れ替わる体験ができる「漫画サイネージ」や、本音が書いてある「本音シール」をプレゼントするという企画にしました。
バレンタインが、女性から男性へチョコを贈るというイベントだけで終わるのではなく、買い物を楽しんでもらえるように、話題のきっかけとなり盛り上がるように、いろいろと考えてきたのです。
バレンタインが盛り上がるようにさまざまな企画を実施してきた松屋銀座は今回、以前も設置していたイートインのスペースを活かして、チョコを買ったお客様に「くつろぎ」と「フォトジェニック」をコンセプトにした空間を作ることになりました。 昨年までは、イートインスペースとイベントのPRをおこなうスペースは別に設置していたためそれぞれのスペースが狭くなってしまい、限られた空間をうまく使えていませんでした。
今年は、限られた場所をより効率的に活用するため、イートインスペースとPR場所を一つにまとめました。 さらにイベント会場の内装も、今回のイベントテーマや目的に合わせ、工夫を凝らしました。
「板チョコ部屋」の他には、バレンタインに関連したトリックアートや、大きな紙袋に入ったパネルを使ったフォトスポットといった案が候補として挙がりました。 そのなかから、「くつろぎ」「フォトジェニック」のテーマに合っていることや、松屋銀座がもつ上品なイメージに合っていることから、今回の企画を「板チョコ模様」に決定。完成した板チョコ部屋は、広いスペースの四方が板チョコのデザインになっているため、食べるだけのスペースではなく、バレンタインの雰囲気を満喫できる空間になりました。
さらに「板チョコ部屋」にARのフォトブースを用意した背景には、銀座松屋が秘めていた「お客様に買い物そのものを楽しんでもらいたい」「松屋銀座で価値ある体験をしてほしい」「今までにない新しいことに挑戦してみたい」そして「板チョコ部屋をよりシェアしたくなるような空間にしたい」という思いがありました。 これらを具現化するためのツールが「AR」だったのです。
実際にチョコ部屋とARを体験してみた
実際の「板チョコ部屋」に入ると、まるで現実とは違う世界でした。 「板チョコ部屋」は、期間限定のチョコレートやスイーツを販売している会場のすぐ横にあり、部屋全体がチョコレートのデザインとなるように装飾されていました。そのため、まるでお菓子の家にいるような感覚を味わいながらスイーツを食べることができました。 他にもこの「板チョコ部屋」には、来場者を楽しませるための、「とある仕掛け」がありました。 部屋の中央の壁にある「MATSUYA GINZA」と書かれたハートマーク部分を、無料ARアプリ「 COCOAR 」でスキャンすると、スマホにオリジナルのフォトフレームが出てくるというものです。
フォトフレームは、松屋銀座の持つ上品なイメージを壊すことなく「新しいことへの挑戦」という印象をもたらし、実際にたくさんのメディアでも企画が取り上げられました。
さらにはこのイベントをきっかけに海外のメディアも取材に訪れ、インバウンドの施策にもつなげることができたのです。
PRや企画の新たな一種としてのAR
時代によって、PRやイベントに使われるツールは移り変わってきました。
最近では電鉄やイベント、観光スポットでARスタンプラリーを実施したり、ARフォトフレームでキャラクターと写真撮ができたりというイベント企画やPRで活用されるケースが増えてきています。
しかし、いずれの場合も、単に「ARだから良い」という訳ではなく、来場するお客様の層や主催者側の目的、悩みの解決策としてARが適していたからです。
集客や販売促進に悩んでいる企業や団体にとって、新しい悩みの解決にARを活用してみるのも一つの手なのではないでしょうか。