ARで作品に参加し、変化を観察する!「木梨憲武展 Timing ー瞬間の光りー」でのARを活用した取り組み
こんにちは!ARGO編集部のちかです。
今回は「木梨憲武展 Timing ー瞬間の光りー」で楽しめるAR作品「REACH OUT FLOWER」の制作現場を見学させていただきました!
「木梨憲武展 Timing ー瞬間の光りー」とは
2022年6月4日(土)~6月26日(日)まで上野の森美術館で開催される美術展。2018年7月の大阪会場を皮切りに、自身2度目の全国美術館ツアーとして全国各地で開催されていました。本展は、最終開催として本来2020年に東京へ帰ってくる予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大のため、本会期に延期されました。
ニューヨークやロンドンの個展で発表した「OUCHI」シリーズ、「REACH OUT」シリーズや、2014年6月上野の森美術館にわずか20日間で約10万人を動員した「木梨憲武展×20years」での大人気作まで、絵画だけではなく、ドローイング、映像、オブジェなど自由な発想による作品約200点が展示され、東京会場では最新作も公開されます。
また、音声ガイドも用意され、タレントで映画評論家のLiLiCoさんと木梨さん本人が出演。 まるでラジオのような軽妙な掛け合いとトークで木梨ワールドを楽しむことができます。豊富な展覧会限定グッズも用意されているため、展覧会の楽しい雰囲気を自宅でも味わえます。
木梨憲武さんによる「REACH OUT FLOWER」制作
「REACH OUT FLOWER」はVRゴーグルを用いて制作されました。VRゴーグルで自らが何かを制作するのは初めてだという木梨さんですが、VRゴーグルを装着してリモコンを手に持つと…、
すいすいと戸惑うことなくオブジェを制作していきます…!
上下左右、縦横無尽に部屋いっぱいを動き回って描いており、出来上がりの大きさがどんなものになるのかわくわくしてしまいました。ARでみたときにはすごい迫力になるのではないでしょうか。
デジタル作品だからこそ、一度大枠を作ったあとから、作品内部に入って細部を足すことも可能。わたしたちはVRゴーグルなしでまわりで様子を見学させていただきましたが、VRゴーグルをつけた木梨さんには間近に自らが描いた線が存在して見えるため、作品内部に入る際には、線を跨いだり、くぐったりといった動作もされていました。
VRゴーグルでオブジェの制作を終えると、画面で全体を確認。ここでARで出現させる際のオブジェの色や背景色も決定しました。
物体の制作後に色を変えられるのは、デジタル作品ならではですよね。木梨さんも色が変えられるのか!と驚いた様子で、どの色が一番いいか、吟味していらっしゃいましたよ。
「REACH OUT FLOWER」制作中にも木梨さんは様々にアイディアを出していき、その場でどんどんと作品が出来上がっていっている印象を受けました。
終始楽しんで制作されており、「(VRゴーグルでの制作を)気に入っちゃたらどうしよう…」などという感想も出ていましたよ(*^^*)
木梨憲武さんインタビュー
ちか:実際にデジタルツールでアート作成をおこなってみての感想はいかがですか?
木梨さん:また新しい世界、新しいアートに連れていってもらえましたね。ARだけの作品をもっと増やしていきたいと体験してみて感じました。
360度の世界の中で、制作時のアーティストの視点が映像で残せたり、みんなが参加できる参加型で展開できたり、色も簡単に変えることができるし、描いた線が「その線じゃないな」と感じたらボタン一つで消すことができる。さらに、作品の形ができてきても制作者本人が作品を通り抜けられるなど、いろいろな可能性がある技術だと思います。
今までVRゴーグルをつけて映像を楽しむアトラクションはいくつか体験したことがありましたが、自分がVRゴーグルをつけたうえで、その世界の中で何かを作るというのは初めてでした。
ちか:制作物を外側からだけでなく、内側からも確認ができるのはデジタルならではですよね。ARやVRなら実際に作品があるような臨場感なので、内側からの視点も面白そうです。
VRヘッドセットをつけてのアート制作は初めてとおしゃっていましたが、ためらいなく作品を作っているように感じました。普段からそのような作品作りをされているのでしょうか。
木梨さん:アドリブと下書きのない世界が大好きなので、いつも頭の中ではなんとなく描いていますが、実際には1回勝負で作品を作ります。…でも今回のAR・VRアートだと、1回勝負だと思っていても、消せてしまいますね!(笑)
ちか:ほんとですね(笑)
気持ち的にはいつも1回勝負として制作してらっしゃるのですね。
ARやVRを活用したアートに関して、今後も活用してみたいですか?
木梨さん:今回体験してみて、AR・VR空間の中で、どこまでも大きく作品が作れるなと思いました。それも新しい世界ですよね。
体育館いっぱいだったり、野球場いっぱいの作品だったり、大きい作品も作れそうなので面白いですね。
また、AR世界だけのライブも想像しました。素敵な音楽とともに、AR空間の中で作品が出来上がっていく様子が見れたりとか。わたしは音楽活動もしていますが、その際はいつものようなボーカルではなくアーティストとしてアート作品をお届けしたいです。
ちか:今回VRヘッドセットで作成した「REACH OUT FLOWER」は実際の会場や会場外でスマホで楽しめる参加型アートになっているのですよね。
木梨さん:そうです。
わたしはあくまでも、REACH OUTオブジェのベースとなる「幹」を描いただけです。そこに皆さんでフラワーをつけていただければと思っています。つく場所はランダムにつきます。
もしわたしのイメージと違う場所についていたら、ARなので消しちゃいます。…嘘です!どういう風につくかも含めてのこのAR作品なので間違い、不正解はありません。
皆さんが参加してくれればくれるだけ、どんどんフラワーブーケのようになるのではと思います。皆さんがつけてくださるフラワーでわたしが描いたREACH OUTのベースも見えなくなってしまうかもしれないですね。
コロナ禍の中でここ2年は、家だったりアトリエだったりで自分だけの時間を過ごすことができ、いい時間になったと思っています。今回の展示でも自粛中の作品を含めた新作のアートを見ていただけるようになっています。
ちか:ありがとうございます。最後に、ご来場される方や「REACH OUT FLOWER」に参加される方に対してひとことお願いします。
木梨さん:芸能画家として素敵なお部屋をたくさん用意していますので、わたしのアトラクションに参加いただいたり、見ていただければと思っています。
ソフトバンクチームの方とも何度も打ち合わせをして今回にたどり着きました。ソフトバンクのARコンテンツゾーンもありますので、こちらも注目してみてくださいね。
素敵なアトラクションのコースを作りますので、ぜひ上野へ足を運んでみてください。
ちか:本日はありがとうございました。
ソフトバンク 栗尾さんインタビュー
今回の企画で活用する「AR SQUARE」をはじめとした、「5G LAB」のエンタメ系コンテンツの企画制作を担当している、ソフトバンク株式会社コンテンツ推進統括部制作渉外部の栗尾さんにもお話をお聞きしました。
栗尾さんは2年前にヤフー・GYAOから主務出向として、エンタメコンテンツARを軸としたグループシナジーを発揮する取り組みを主たるミッションに活躍されています。本プロジェクトでも企画制作におけるプロデューサーをされています。
ちか:今回の企画開催に至った経緯について教えてください。
栗尾さん:かねてよりGYAO!でのオリジナル番組「木梨の貝。」で木梨さんにはお世話になっており、ソフトバンクに移ることになってからもことあるごとに木梨さんに企画へご協力いただいています。
これまでも、「日常のエンタメコンテンツとまだ距離感のあるxRコンテンツをつなげて親近感あるものにする」という狙いで、木梨さんにもいろいろとアイデアをいただきながら、VR「木梨の貝」や今回のARコンテンツの前身となる作品など、いろいろなチャレンジをしてきました。
アート×xRの取り組みは国内でも増えてきていたという時流もありますが、一方でソフトバンクとしては事例がなく、木梨さんとの取り組みが初のアプローチになりました。
アート×xRといっても一般の方からするとより距離感がうまれる可能性もあると考えていたため、アートファンのみならず距離感の近い作品をアウトプットされている木梨さんとならより親近感の沸くアート×xRが生み出せるのでは、という思いと、木梨さんご本人も常にあたらしい表現方法を模索されチャレンジされている方なので、あたらしい技術を使った企画に興味をもってもらえるのではないかと考え、木梨さんに相談したのが本プロジェクトの最初の経緯になります。
ちか:ありがとうございます。今回の企画に関して教えてください。
栗尾さん:今回の 「REACH OUT FLOWER」は、参加者の方によって最大で10万枚の花がつくことを想定して作っています。「AR SQUARE」を活用して、展示会場ではもちろん、自宅など会場外からも「REACH OUT」体験や、「REACH OUT FLOWER」が変化・成長していく様を観察することができるようにしました。
「REACH OUT」体験は、体験後30秒から1分ほどで作品に反映されるため、リアルタイムで変化が楽しめます。また、自分が参加したことを実感できるように3Dアートのなかの自分の投稿も『さがす』ことができるようにしました。展示会場内にはいくつかiPadも配置しますので、スマートフォンをお持ちでない方にもご参加いただけます。
「REACH OUT FLOWER」はデジタルアートかつ会期中に同時進行で完成していくアートで、「共創型の3Dデジタルアートへの挑戦」だといえます。
一方的にこんなアートできましたとお披露目するのではなく、「木梨憲武展AR」は木梨さんとみんなで会期期間を使ってつくりあげていくアートです。世界で初めてなのかは定かではありませんが、他に類を見ないチャレンジングな取り組みだと思います。
ちか:会場外からも楽しめるのですね!会場を訪れることができない方だけでなく、実際に会場で参加された方も完成までの様子を楽しむことができますね。実際に木梨さんと取り組んでみていかがでしょうか。
栗尾さん:そうですね…。ツールをお渡ししたら、予想以上のものが出来上がったと感じています。
木梨さんはもともと、直感的に動いて、その場でどんどん作りこんでいく方です。とにかく新しいものに興味をもって楽しんでくれ、なおかつこちらが想像していたものを圧倒するアイデアを打ち返してくれるので、毎回驚きと感動の連続です。
また、「皆さんの手を加えて、作品を一緒に作り上げよう」という思いが強い方でもあります。木梨さんは「アートってもっと気軽にもっと楽しくあってほしいし、ひょっとしたら自分もできちゃうんじゃないのと思ってもらいたい」と常々おっしゃっています。
今回の取り組みを通じて、参加者の方にはより広く作品に触れていただく機会になればと思っていますし、「xR技術とアートのかけあわせでこんなこともできるんだ」とスマホの可能性にも触れてもらいたいですね。
ちか:今回のプロジェクトを通して感じたxRの可能性に関してはいかがでしょうか。
栗尾さん:まずアートとxR技術は相性が良いというか相互補完がなりたつ分野なんだろうなと思いました。次元をこえた表現の幅の変化を与えうる、空想レベルのことを具現化できるため、表現者にとっての強い武器になるのではと感じました。
「スマホをもちながら美術館を観覧する」というのはまだまだイレギュラーというかマイナーな状況ですが、今後はもっと増えていって、あたりまえの状態にだってなるのではと感じていますし、そういったきっかけにもなればいいなと思います。
ちか:ありがとうございます。AR×アートの今後に関して、技術チームの方から見ての今後の展望をお聞かせいただけますか。
栗尾さん:NFTの出現によってデジタルアートに新たな価値がうまれていると思います。アート×xRも、今後は、アート×NFTになってさらに副次的な価値や取り組みになっていく予感と実感があり、さらにメタバースもかけあわさることでさまざまな世界観のなかでのデジタルアートがどんどん生まれるのではないでしょうか。できることなら今後も木梨さんと先進的な取り組みを継続的におこなっていきたいと考えています。
ちか:本日はありがとうございました。
「木梨憲武展 Timing ー瞬間の光りー」では「REACH OUT FLOWER」のほかに、「フェアリーズ ー街ー」という作品でも会場限定でARを活用した演出が楽しめるのだとか。
ARを活用したことでよりインタラクティブな体験ができるようになっていますので、会場や自宅から楽しんでみてくださいね。
会期期間の中で、参加者の手によって完成へと向かう「REACH OUT FLOWER」。会期終了時の完成がとても楽しみです。
INFO
ARアプリ「AR SQUARE」
【ストアURL】 App Store(iOS) / Google Play(Android)
「木梨憲武展 Timing ー瞬間の光りー」
会期:2022年6月4日(土)~6月26日(日)※会期中無休
会場:上野の森美術館
開館時間:9:30~17:30 ※金土日は19:00まで (入場は閉館の30分前まで)
入場料:平日/一般2,200円、大学・高校生1,500円、中・小学生700円(税込)
土日/一般2,400円、大学・高校生1,600円、中・小学生800円(税込)
※日時予約制
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