ARバトル「ぺチャバト」・「HoloBreak」を提供するGraffityの展望を聞いてみた
こんにちは!ARGO編集部のちかです!
今日は、ARシューティングバトルの「ぺチャバト」や「HoloBreak」などを提供するGraffity株式会社(以下、Graffity)のCEOである森本俊亨さんにインタビューさせていただきました!
ちか: 今日は国内外でARバトルを提供されている森本さんにARの可能性やARのこれからについてのお話をお伺いできるのを楽しみにやってきました!よろしくお願いします。早速なのですが、Graffityの概要についてお伺いできますか ?
森本氏: こんにちは。Graffityは、簡単に言うとARバトルを提供する企業です。最初のARバトルとして、2018年12月にスマホで手軽に遊べるARシューティングバトル「ペチャバト」をリリースしました。最近でいうと、2019年9月7日(土)、8日(日)に複合型体験エンターテイメントビル「アソビル」で「HoloBreak」というARシューティングバトルの体験会を開催しました 。
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ちか:ARバトルという呼び方は珍しいですよね。
森本氏: そうですね。私たちは、ひとりでプレイするゲームを作っているわけではなく、みんなでやるから楽しいといった、コミュニケーションが生まれるゲームを作ることにこだわっています。とりわけ、私はコミュニケーションを重視したゲームと、ARはとても相性がいいと思っていて、そこを突き詰めたいなと思っているんです 。
ちか:「ペチャバト」や「HoloBreak」を作るにあたって苦労したことはなんですか?
森本氏: 「ペチャバト」の時もそうでしたが、ユーザーのコアなゲーム体験をどのように改善していくのかということがいつも課題になっています。ユーザーに体験してもらい、それを観察したり、ヒアリングすることで見つかった改善点を「なるほど」と改善していく地道な作業がどうしても必要になるんです。その作業を2週間のサイクルで回しています。将来的には、ゲームセンターやロケーション施設に行くと、IoTのガジェットが使えたり、ARグラスが使えたりという、そこでしか味わえないリッチな体験をしてもらえることを目指しています 。
ちか: 9月にアソビルさんで「HoloBreak」の体験会を開催したのもそういった狙いがあったんですか?実際に開催してみてどうでした ?
森本氏: 多くのユーザーに体験いただき、意見をもらいたいと思って、ロケーション施設での体験イベントを開催しました。実際にやってみて、「HoloBreak」は結構スペースも必要ですし、施設でやるなら回転率を上げなければいけないなど様々な課題が見えました。逆に良かったことは、場所が決まっていることによって位置がずれることがなく、一定のクオリティのARバトル体験を提供できることや、ターゲット以外の層に「HoloBreak」の体験をしていただき、意見がもらえたことです。今回、2日間で1ゲーム800円だったんですが、100名以上のお客さまに楽しんでいただいて、平均満足度も10段階中9という結果となりました。
ちか:客層はどういった感じだったんですか?
森本氏: 会場の上の階で「うんこミュージアム」をやっていたこともあって、50%くらいが親子、30%が20代という感じでしたね。私たちのターゲット層は中高生だったのですが、親子連れや20代の人たちが楽しんでプレイしている姿を見て、新しい気づきがたくさんありました。私たちが考えていた、「身体を動かすだけでなく頭も使う」というARバトルならではのコンセプトは参加者の方もヒアリングしたなかで言ってくれていたので、狙いどおりでした 。
ちか: Graffityさんの作るゲームはコミュニケーションを重視されていますが、実際に「HoloBreak」を体験されている人を見て、どのようなコミュニケーションが生まれていると感じましたか ?
森本氏: ゲームが始まる前からチームのなかで役割分担を決め、ゲーム中も「お前はここを狙って!俺はこっちを倒すから!」といったコミュニケーションが生まれていました。ゲームが終わった後にも、なぜ負けたのかという反省会をしていて、まるで普通のスポーツをしているような感覚がARバトルにも生まれていることがとても嬉しかったです 。
ちか:実際に体を動かすゲームだからスポーツ感覚になるのかもしれませんね。ところで、Graffityさんはペチャバトの競合となるサービスは何になると考えていますか ?
森本氏: 私たちは、家でゲームをしたりひとりで動画配信を見たりといった時間が競合になるとは考えていません。カラオケに行ったり、ボーリングに行ったりするという「友達と何かをする時間」が競合になりうると考えています。友達と過ごしているときに「何する?」となったときや、誰かと楽しみたいと思っているときにこそARバトル使ってもらいたいですね。
ちか:確かに、実際にその場にいる人と対戦を行うので、友達とだとさらに盛り上がりそうですね!私もぜひ友達と集まった時に遊びたいと思います!
話は変わるのですが、ARについてのお話をお聞きしたいと思います。ここ5年くらいの間で世界中でARを使ったサービスの研究や、サービス開発が活発化しているという印象があるんですが、なぜ今、ARが注目されていると森本さんは考えられていますか?
森本氏: 大きな要因は、ARの2つのコアな技術、SLAM(スラム)という空間認識を把握する技術と画像認識の技術が向上してきたことだと考えています。みなさんが持っているスマホが両者の技術に対応できるくらい性能が良くなってきたいうことです。また2013年ぐらいからディープラーニングの領域では画像認識の研究が進んできており、当時はGPUベースで動くものだったのが、今はネットワークを圧縮できスマホでも動作できるようになったこともあります。要は、スマホのスペックが上がったこととAR技術の発展によってスマホでAR体験することができるようになったという革命ですね。もちろんデバイスとしてはARグラスも注目されていますよね 。
ちか: 国内のAR業界をどう見ていますか ?
森本氏:アメリカよりも日本の方がARの認知に関して遅れているなと感じます。そもそも日本はARに触れられる機会が少なく、アプリも数えるほどしかありません。加えて、日本ではSNSはLINEをはじめとしたテキストチャットが主流ですけど、アメリカではSnapchatを使っている人が多くて、そのなかではARがあたりまえのように使われているので、アメリカ人にとってARは身近なものなのかもしれません。
また、世界全体では、コンシューマー向けが少なく、私たちくらいなのではという印象があります。なぜかと言うと、今までにホームラン級のプロダクトが出ておらず、投資されなくなってきたからです。私たちは、ARをコアな体験価値とした事例を作るために努力しています。そこが出てこないかぎり、コンシューマーのスタートアップも増えないだろうし、投資もされないだろうと思いますから。だから先陣を切ってやっているし、そこを切り拓くということが課題だと思います 。
ちか: 森本さんがARに対して感じる面白さはどんなことでしょうか ?
森本氏: ARはデバイスによって、特にスマホとグラスでは受動か能動かという明確に違う体験が提供されると思います。スマホは自分からアプリを開き、空間上の画像を認識してデバイスを操作する体験です。反対に、グラスの場合は会話している相手の目の動きから感情を読み取ったり、外国語の標識を見ているときに翻訳されて表示されたりする受動的な体験です。たとえば今、こうやってちかさんと会話をしているときに言葉が吹き出しで出てきたり、私が笑うと羽がバサバサと動いたりしたら面白いですよね (笑)
ちか: 現状、ARグラスよりもスマホアプリの開発をメインとされていますが、ARグラスの時代に備えるために今何をすべきと考えていますか ?
森本氏: 2つあると思っています。「知見を蓄える」ことと「チームを作る」ことです。私はARにおけるUI/UXはまだ確立されていないと思っています。最初、私たちも前例を色々と探してみたものの、見つからなかったので自分たちで作ってきました。自分たちで手を動かして検証してきたことが知見に、そして私たちの財産となってます。加えて、開発チームがどの程度ARに対する熱量を持っているかも大事です。私たちは「HoloBreak」を引き続き開発していきますが、デバイスがグラスに変わったとしても、高い熱量を持って新たな価値検証をしていきたいですね 。
ちか: そうですね。グラスに移行した時にスマホでいかに実力をつけたかどうかによって技術もなにもかも厚みが変わってきそうですよね。最新のARの情報を得たいと思ったら、何をチェックするのがいいでしょうか ?
森本氏: 私のTwitterを見てくれたら、最新の情報は得られると思います(笑)
他には、『AWE Nite Tokyo』というARコミュニティを立ち上げたので、こちらのコミュニティへの参加もお待ちしています。このコミュニティの母体であるAWE(Augmented World Expo)の主催するイベントやカンファレンスに参加すると、最先端のAR技術・知識が身につくと思います。アプリケーション層でいうと、日本の方が進んでいるのでGraffityや株式会社ENDROLLさんや株式会社MESONさんのリリースをチェックしていただけるといいと思います 。
ちか: では、最後に今後どのようなロードマップをGraffityさんとして描いていらっしゃいますか ?
森本氏: Graffityは、「ARで、リアルを遊べ。」というミッションを掲げています。来年の夏から秋にかけて、「HoloBreak」をブラッシュアップし、正式リリースしようと考えています。究極的には誰もがサッカーを知っているように、「HoloBreak」も同じくらいに認知されるよう頑張っていきたいと思います。
ちか:今日はありがとうございました。