ARヘッドセットを白杖の代わりに着用、カリフォルニア工科大学研究チームが視覚障害者向けナビシステムを開発中
カリフォルニア工科大学(Caltech)は、ARヘッドセットを実験に使用し「Augmented Reality Powers a Cognitive Assistant for the Blind( 拡張現実は視覚障害者のための認知アシスタントを強化する)」と題した論文を発表しました。
今回の実験に使用されたのは、マイクロソフト社のMRデバイスHoloLensです。ユーザーがこのヘッドセットを装着すると、現実空間にある物体の方向からその物体の名前を知らせる音声が再生され、どこに何があるかを把握することができます。また、この音声はユーザーから見た距離に応じて音の大小が変化するので、目が不自由な人は初めて訪れる場所でも自分で行動することが可能です。
研究チームは、ヘッドセットを装着した7人の障害者にビルの中を歩いてもらう実験を実施。最低限の訓練をおこなうことで、ロビーや階段などを簡単に移動できたことから、ナビゲーションシステムの高い有効性が示されました。
世界保健機関(WHO)によると、世界中の約13億人の人が何らかの視力障害を起こしており、3,600万人を超える人々が全盲であると推定されています。被験者のTommy Marcellus氏は「この技術は、私たち障害者に独立性と安全性を与え、日々の生活を助けてくれます。今後は町の中にも、白い杖の代わりにARヘッドセットを着用している人たちを多く見ることになるでしょう」と語っています。
同チームは今後、公園やショッピングモールといった公共施設にも対応できるシステムの開発を目指していくとのことです。
ARGO編集部のひとこと
MR(複合現実)対応ヘッドマウントディスプレイは、ARや仮想現実(VR)を表示できるデバイスです。デバイスが障害物を認識し、適切なAR音声で視覚障害を持つかたがたを導くことができるこの技術が発展すれば、行動範囲が広まり、できることが増えるようになるでしょう。