AR・VRで当時の姿を再現!ソウル市の「敦義門(とんぎもん)」が104年ぶりに仮想空間で復元
2019年8月20日(火)、韓国のソウル市は文化財庁・宇美建設・第一企画とともに推進した「敦義門デジタル復元プロジェクト」を終え、ARとVRで復元した敦義門を公開しました。
出典:朝鮮日報
敦義門はソウル市鍾路区に位置し、朝鮮時代の漢陽都城(ハニャントソン・朝鮮王朝時代の城郭)の4大門のひとつ。1915年の日韓併合後に老朽化と道路建設のため解体撤去されていました。2013年に復元予定でしたが、建設に多額の費用がかかることから、仮想現実技術を利用したデジタル復元を行いました。
復元された敦義門は、鍾路区ジョンドン交差点へ行き「敦義門」ARアプリを起動して、敦義門があった場所にスマホをかざすと表示されます。
また、同時にVRでのよりリアルな敦義門の体験も可能となっています。ジョンドン交差点付近にある敦義門博物館VR体験館でVR機器をレンタルし使用することで、敦義門の左右にある階段から門楼に上がり、漢陽都城内外を見下ろす体験ができます。20日にVR体験をした小学生キム・ミンチェさん(11歳)は、「敦義門が開いて、門楼に上がっていく瞬間がすごく不思議だった」と話しました。
今回のデジタル復元は宇美建設がアイディアを出したことからスタートし、ソウル市と文化財庁が総括企画を引き受けました。技術開発にかかる費用5億7000万ウォン(約5020万円)は宇美建設が負担。専門家らも参加し、9ヶ月にわたり作業を行いました。
本プロジェクトに携わった金王稙(キム・ワンジク)明知大学教授は、「撤去以前の写真資料を基に前面3間、側面2間、55平方メートル(原文ママ)の復元図面を立体的に作成した」と制作時のエピソードを語っています。
文化財庁の関係者によると、今後は漢陽都城の滅失区間など、失われた文化財をデジタルで復元し、教育・観光・エンターテインメント資源として活用する計画を立てているとのこと。敦義門を皮切りに、デジタル復元される文化財が増えていく見込みです。
ARGO編集部のひとこと
以前ARGOでも取り上げていた「敦義門デジタル復元プロジェクト」が、ついに完成を迎えたようです!実物の建築には多額のコストがかかる上に、経年劣化によって耐久性が落ちたり、機能性の低下がみられるようになります。ですが、AR技術を活用すれば低コストで済むだけでなく、建物のメンテナンスも不要というメリットが得られます。歴史的建造物のAR化は、建造物の保存と活用において有効な手段のひとつになるでしょう。また、本プロジェクトでは、VRで当時の景色を楽しみ、ARでは今との対比、というよう技術それぞれの特性を生かした使い分けがなされています。