テレワーク拡大に伴い登場したAR・VR施策をまとめてみた
テレワーク需要が急速に高まり、対面サービスのAR化や、ARグラスによる遠隔教育を取り入れる企業が増加したことに伴い、テレワークに使えるAR・VRの開発が進んでいます。本記事ではそんなテレワークの現状と、テレワークに使えるAR・VR施策を紹介します。
テレワークの広がり
新型コロナウイルス感染症の拡大をうけ、テレワークを導入する企業が増えています。東京都が2020年5月に発表した「テレワーク「導入率」緊急調査結果」によると、2020年4月時点で49.1%の都内企業の社員がテレワークを実施。2019年12月時点で15.7%だったため、4カ月で約3倍の増加となりました。
一時テレワークで仕事の効率が下がるというデータもありましたが、公益財団法人 日本生産性本部が継続して調査を進めたところ、「第4回 働く人の意識調査」では「テレワークになり効率が上がった」と答えた人は50%を超え、「自宅勤務に満足している」と答えた人は69.8%という結果も出ています。
導入当初はテレワークに不慣れだったこともあり、効率が下がると感じた人が多くいましたが、約半年経過し慣れてくると、テレワークのほうが「効率が良い」「満足している」という意見が増えました。オフィスワークよりもテレワークにメリットを感じる人が増えているようです。
また「コロナ禍収束後もテレワークをおこないたいか」という質問に対し、「そう思う」と答えた人は34.7%。「どちらかと言えばそう思う」と答えた人は41.7%という結果になりました。全体の70%以上がテレワークの継続を求めています。
仕事が効率的に進められて、テレワーク希望者が多いという結果もあり、今後もテレワークを取り入れた働き方が増えていくと予想されます。
【AR施策】
テレワーク専用のARが開発されるなど、テレワークの増加はAR市場にも大きな影響を与えています。またコロナ禍になり、ARを利用した非対面、非接触コンテンツも多数リリースされました。では実際にどのようなAR施策がおこなわれているのでしょうか。いくつか紹介していきます。
ZoomなどオンラインMTGの背景
テレワークにより、オンラインミーティングをおこなう機会が増えました。その際、ビデオ通話では自宅の内装が見えてしまうため、背景に別の画像を合成している人も多いでしょう。この背景にもARが使われています。
出典:Zoom
バーチャル背景を使えば、プライバシーを守り、ビデオ通話に集中できる環境づくりができるでしょう。
バーチャルスーツやバーチャルメイク
テレワークで自宅にいるのに、オンライン会議のために化粧をしたりスーツを着たりするシチュエーションもあります。そんな時に活用できるのがバーチャルスーツやバーチャルメイクです。
例えば、「Web通話時にARのスーツを着用できるアプリ」。合成感はありますが、これを使用すればスーツを来ているかのような風景が撮影できます。
ところで、Web通話時にスーツ着れるアプリケーション作ったので良かったら使ってください。
— なかひこくん さんと他98人 (@takanakahiko) March 4, 2020
takanakahiko/web-demo-suit https://t.co/deEm92Bhaq pic.twitter.com/ttQHtEOHDs
多くのビデオ通話を提供するサービスには、肌トーンを上げたり加工ができたりするコンテンツが内蔵されています。メイクをしなくてもコンディションの良い状態を演出できるでしょう。
そのほか、ZoomやSkypeで利用できるバーチャルメイク用のフィルターも公開されています。資生堂が提供している「TeleBeauty」は、素顔でもメイクしているように見えるARフィルター。フェミニンやブラウンメイク、レトロモダンメイクなどの最新メイクが楽しめます。
出典:TeleBeauty
ARグラスによる遠隔教育・遠隔指示
ARスマートグラスを利用し、業務効率化を進める事例も多くなっています。
サン電子とNTTドコモが提供している「AceRealⓇ for docomo」は、ARスマートグラスを利用して、遠隔地からスタッフをサポートできるコンテンツ。オフィスと現場の状況をリアルタイムに共有できるだけでなく、現場スタッフは動画や指示書を見ながら作業を進められます。
紹介したスマートグラス以外にも国内外でさまざまな商品が開発されており、ARスマートグラスを国際宇宙ステーションの機材メンテナンスに利用する試みも始まっています。今後もさまざまなシーンで活用されていくでしょう。
対面サービスのAR化
今まで対面が必須だったサービスにもARが取り入れられています。例えば不動産の内観です。コロナ禍により対面営業がしにくくなったこともあり、非対面で内観ができるようなコンテンツの開発が進んでいます。
株式会社YONDEが提供しているバーチャル内覧では、アプリを必要としないウェブARを利用。スマートフォンを使って、その場ですぐに内観ができます。
出典:株式会社YONDE
株式会社ジブンハウスがリリースした「WARP HOME(ワープホーム)」を使うと、土地にカメラをかざすとモデルハウスが出現。実際に中に入れて、ARの窓から外の景色を見ることも可能です。
出典:WARP HOME
そのほか化粧品売り場のタッチアップにAR技術が使用されるなど、さまざまな対面サービスのAR化が進んでいます。
【VR施策】
テレワーク用のVRコンテンツも多数登場しています。VRを使えば、離れていても実際に合って会話をするのと変わらないコミュニケーションができるでしょう。
VR会議・オフィス
NEUTRANS BIZが提供するVRイノベーションタワー「NEUTRANS」は、バーチャル空間をオフィスとして使えるサービスです。仮想空間の中でパワーポイントを用いたプレゼンテーションができ、ホワイトボードに文字を書くこともできるため、会議や営業活動に最適。
出典:NEUTRANS
また米国のスタートアップImmersedはVRを使用した、バーチャルコワーキングスペースを開発しています。仮想空間でバーチャルモニターを見ることができ、隣に座っているような感覚でリアルタイムに会話ができるなど、VRを使用すればビデオ通話ではできない、リアルなコミュニケーションができるでしょう。
まとめ
テレワーク需要により、仕事に使えるAR・VRがどんどん登場しています。特にARは、大がかりな装置や仕組みを使わずとも利用ができ、背景を隠してプライバシーを守ったり、バーチャルメイクをしたり、遠隔教育にも使えたりと、さまざまな使い方ができるのが特徴です。
在宅勤務で効率が上がったと実感した人、テレワークの継続を求める人も多く、社会的にも非対面サービスを取り入れるなど変化が進んでいます。今後ますます働き方は多様化していくでしょう。それに伴い、AR・VR需要はますます加速していくと予想されます。